◆Column 【コラム】

秋のお酒、ひやおろしとは。

2014/11/15

秋の味覚である秋刀魚や戻り鰹、松茸などのキノコも食べ頃を迎え、食卓を彩るようになってきました。ところで日本酒にも秋の味覚が有るのですが、御存知でしょうか?

従来日本酒は寒造りと言って、冬場に造るものでした。お米の収穫のタイミング、温度などの環境条件、その他様々な要件が重なってのことでした。その冬に造ったお酒を一夏じっくり低温で寝かせて、秋に発売されて来るお酒が、ひやおろしと呼ばれる秋のお酒です。

●熟成

このひやおろし、半年間の低温熟成を経ることで、旨味がしっかりとノり、またまろやかな味わいになっています。化学的には、熟成期間中に熟成過程でしか生成されない旨味が生まれ、そして代謝が進んでよりやさしい呈味性の物質にかわります。また香りの成分として、カラメル臭のするフルフラールや老酒臭のするソトロンという物質が生成されてきます。分子物理的には、それぞれのアルコール分子と水分子との親和性が増し、味がまろやかになります。

 

●ひやおろしのタイプ分類

(1)香りを生かしたタイプ

 

おすすめ 陸奥八仙(青森県)特別純米 ひやおろし

口に含むと華やかで落ち着いた香りが広がり、優しい甘みが感じられます。

味わい自体にはしっかりと軸があり、半年の熟成による味わいの深さを感じさせます。

飲みやすさとひやおろしらしさ。バランスが非常に良く、人気も抜群です。

 

(2)旨みしっかり純米タイプ

 

おすすめ 春霞(秋田県) 特別純米 ひやおろし

お米の持つジューシーな旨味が特徴的です。お米の持つ味わいをしっかりと堪能できるタイプです。ひやおろし感はありつつも繊細さも感じられ、用途、飲み手を選ばない万能選手です。

 

(3)コクがある、フルボディタイプ

 

おすすめ いづみ橋(神奈川県)秋とんぼ 山廃 雄町

熟成による複雑な味わい、コクが売りのタイプです。暖めて飲んでこそ、その真価を発揮する酒、とも言えます。

暖めることで、複雑に絡みあった味わいがゆるゆるとほどけ、華開きます。

特にこちらの蔵はお米造りから行っているほどお米にこだわりのある酒蔵。お米の旨味にこだわり、飲めば飲むほど料理が欲しくなるお酒です。

 

(4)新しい秋酒!生酒タイプ

 

おすすめ 龍力(兵庫県)特別純米 ひやおろし

秋に飲んでおいしいお酒こそが“ひやおろし”という解釈の元、リリースされているのが、兵庫県の龍力です。従来のひやおろしは一回火入(加熱殺菌)の作業を行って、品質を安定させてから熟成させています。しかし、このお酒はその火入を行わずに生酒のまま熟成させているタイプです。

原料のお米の種類違いで造られているので、お米別の飲み比べもできますよ!

 

(番外編)超熟成タイプ

 

ひやおろしは、通常半年熟成のお酒です。しかし、近年熱心な酒屋では酒蔵とのコラボ企画で、超ひやおろしといえる1年半熟成の商品や、超々ひやおろしと言える2年半熟成の商品を販売しているケースもあります。この類の商品は数量も限定のことが多く、取り扱い店舗も多くはない為、めぐり合えたらラッキー♪ぐらいの感覚で楽しんでいただけたらと思います。

 

●ひやおろしの楽しみ方

なんと言っても、秋の味覚と相性バッチリです!厚みの有る味わいは脂ののった秋刀魚や鰹の味わいもしっかりと受け止め、渋みや苦味を伴う後キレの良さは次の一口を誘います。お酒のお供に秋の旬のお料理と是非マッチングさせてみて下さい!

 

●まとめ

・秋の旬のお酒、ひやおろし

・キーワードは熟成

・ひやおろしにもタイプがあります

・ひやおろしは秋の味覚と供に!