◆Column 【コラム】

日本酒の保管状況と、いい店、悪い店

2015/1/15   

 

●日本酒の苦手なもの

今回は日本酒にとって優しい店、優しくない店、つまり保存の状況という観点から、飲食店を選ぶポイント

を見ていきたいと思います。

基本的に日本酒が苦手なものが3つあります。一つは紫外線、もう一つは温度変化、そして3つ目が高温

です。これらの条件が悪い保存状況にあると、お酒は劣化していきます。

 

●劣化とは?

劣化というのは、どういう状態になることをさすのでしょうか?

 

1)色(着色)

劣化すると黄褐色に着色します。この変化は比較的短時間で起こります。日光下ではもちろん、同じく紫外線を含む蛍光灯下にての保存でも同様に着色します。

 

2)味(雑味の増加)

劣化に伴い味わいは雑味が増え、バランスが崩れくどくなります。

 

3)香り(異臭の発生)

たくあん漬けの様な香りや、タマネギの様な香り出てきます。老香や日光臭と呼ばれるもので、代表的な劣化臭です。

 

また好ましいとされない条件下でも、上のように劣化するのではなく、むしろ飲み口が良くなるケースもあります。こう言った場合は劣化ではなく、"熟成"ということが出来ます。

 

●熟成と老ね

ワインには100年を超える年代物もあったりして、熟成という価値観が根付いています。一方日本酒においても、やはり熟成という概念があります。

では熟成と、老ね(ひね)と呼ばれる劣化とはどう違うのでしょうか?

簡単に言うと美味しい変化を熟成と呼び、美味しくない変化を老ねとよびます。

長期熟成によって生成される熟成香の香気成分は、ソトロンやフルフラールと言ったカルボニル化合物です。カラメル様の香りや、紹興酒のような香りがします。

一方半年から2年の熟成で生成されてくる、老ね香に関与しているのは有機硫黄化合物(ジメチルトリスルフィドやジメチルジスルフィドなど)です。硫黄のような匂いがします。

前者をバランス良く、後者をなるべく発生させないような環境が、優れた熟成環境と言えます。

 

●保存の条件

 

それでは劣化を引き起こさない、お酒の状態を維持できる保存の状態とはどのようなものでしょうか?

 

1)光

紫外線が大敵ということで、太陽光が直接当たらないようにされているか、紫外線カットの対策を取られていることが条件になります。以前は新聞紙に包んで出荷されたりしていましたが、これも紫外線カットの為という処がありました。

また蛍光灯の中には、博物館で使われるような紫外線を出さないようになっているタイプもあります。

 

2)温度変化、高温

品質保持の為には冷蔵庫保存が一番です。品質の保持に最適な5°以下で、なるべく温度変化の少ない状況を実現できるからです。先述の新聞紙には温度変化を少なくするという側面もありました。

 

●良い店、悪い店

これらを限られた条件の中で実践しているお店がいいお店ということが出来ます。保管に関しては提供温度や、商品の入れ替えのサイクルとの兼ね合いもあるので一概に冷蔵庫に入れてないからダメ!とは言えません。あえて冷蔵庫に入れずに常温で熟成させる人もいます。

 

なぜそうしているのか、そこにその店独自の考え方がしっかりとある、そんなお店こそが"良い店"であると言えると思います。