◆ 辛口?or甘口?
一般に広く日本酒を選ぶ時の基準とされているのが、辛口、甘口といった考え方である。しかし、その判断基準だけでいつも好みの日本酒にたどり着けているだろうか?そもそも辛口、甘口という基準は何をもって区別されているのだろうか?
日本酒度とは甘辛を表す目安となる数値の一つである。糖分が多いと比重が重くなることを利用し、水との比重の差を数値化したものである。数値は水を0とし、辛口は+、甘口は-で表される。
日本酒度が高く辛口といえる数値のお酒でも、酸度が高いものは同じ日本酒度でより酸度の低いものよりも辛く感じる。
➡甘口、辛口の観点からだけでは、現在の多様な日本酒の味わいを的確に把握することができない!
では、どういった分類分けが有効なのか?
◆ 味によるタイプ分類
現在最も広く使われている日本酒のタイプ分けが、きき酒師を主宰するSSI(日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会)の提唱する4タイプ分類である。これは味わいと香りの強度から、日本酒を以下の4タイプに分類するものである。
- 爽酒 軽快で滑らかなタイプ 代表的なもの 本醸造タイプ
- 薫酒 香りの高いタイプ 代表的なもの 大吟醸タイプ、吟醸タイプ
- 醇酒 コクのあるタイプ 代表的なもの 純米タイプ
- 熟酒 熟成タイプ 代表的なもの 古酒タイプ、長期熟成酒タイプ
また、近年では意欲旺盛な蔵元たちにより、この4タイプにも収まりきらない様々なタイプの日本酒が作り出されてきている。
◆ 日本酒全体の中で自分の好みは?
日本酒のタイプ分類を活用することで、自分の好みの日本酒がどのタイプの日本酒であるか判断することができる。
日本には1300蔵ほどの酒蔵があり、日本酒の種類も多岐にわたる。銘柄自身は初見でも、どのタイプのお酒であるかが分かれば味わいの判断をすることができる。
飲み方を選ぶ
◆ 温度帯による味わいの変化
お酒の個性を活かす温度帯で飲用することが望ましい。
味を構成する要素は温度帯によって感じ方が変わる。このため、お酒の味わいの要素によっては温めたほうが美味しいものもあれば、冷やしておいしいものも存在する。
各温度帯における味わいの感じ方の変化は以下のグラフの通りである。
図 温度帯による味わいの感じ方の変化
またお酒に含まれる要素の一つ、有機酸にはその性質から温旨酸と冷旨酸とがある。温旨酸は暖かい温度で美味しく感じ、冷旨酸は冷やした状態で美味しく感じる。それぞれの酸の含有量に応じて味わいが変わり、適する温度帯も変わってくる。
◆ 酒器による味わいの変化
お酒の味わいに基づいて、お酒の個性を活かす酒器で飲用することが望ましい。
酒器の材質の違いにより、唇に触れる部分の質感、熱伝導が変わり、酒器内でのお酒の温度変化の仕方が変わる。
酒器の形状の違いにより、口に流れ込むお酒のスピード、幅、分量が変わり、口の中での味わいの感じ方が変わる。
酒器の厚みの違いにより、味わいの感じ方の繊細さが変わる。
料理とのペアリング
Key Word : 同調 【お酒の持つ個性と、料理の個性を重ねて強調する。】
◆ 味わいの5要素
味を構成する要素は現在のところ、以下の5つの基本味であるとされている。
- 甘味
- 酸味
- 塩味
- 苦味
- うま味
これらの要素は舌にある味蕾の受容体で認識されている。辛味や渋みは、痛みや収れんによるもので、味覚とは分けて考えられている。
料理とのマッチングを考えていく上では、この5つの基本味をベースに考えて、料理とお酒の味わいを同調させていくことが第一歩となる。